【共感障害―若者たちに密かに起こっていること―②】

「ラジオ体操が覚えられない子供達」

ミラーニューロンは、「他者の一連の動作」を認知してモジュール化する。ラジオ体操を真似出来るのも、「腕を上げながら、上体を反らし、脚を広げる」といった一連の動作を、脳がまるっと受け止めるからだ。腕はこう、脚はこう…幼い日に、そんな風に覚えた人はいないはずだ。

実は企業で「新人の反応が薄い」と言われ出す110年以上前から、小学校では「ラジオ体操が出来ない子」が出現し、それを覚えるのが宿題になったりしていた。ラジオ体操なんて、「目の前の見本を真似している内に、何となく身に付くもの」だったはずなのに。ちなみに、同じ頃、「一年生の反応が薄い」というのも、教育現場の話題になったそうである。

どうも、ある年代の子供達から、ミラーニューロンのもたらす共鳴反応が弱くなっている様なのだ。脳が、他者の所作をモジュール化出来ないと、ラジオ体操が出来ないのと同様に、「先輩の背中を見て学ぶ」事もかなわない。

「会議が終わって、先輩が汚れたカップを片付けている」のを「認知出来ない」から、「僕がやります」が言えない。網膜には映っているものの、車窓の風景の様に流れているだけなのである。かくして、共鳴反応の弱い、頷かない若者達は、「話聞いてるの?」「やる気あるの?」「何で、やらないの?」と言われる事になる。

黒川伊保子(脳科学・人工知能研究者)

昔から、「人の振り見て我が振り直せ」とか、「仕事は師や先輩の動きを見て盗むもの」言われてきましたが、これはミラーニューロンのお陰であったわけですね。このミラーニューロンを上手く鍛えていたのが、昔ながらの躾の教育であり、体育(スポーツ=競技ではなく、文字通り、体を育てる運動を通した教育)だったのだと思いますが、この体育が無くなり運動は全て競技スポーツになってしまった。そして知能教育を先行していったのが、共感能力の欠けた人間が育ってしまった根っこにあるのかなという気がします。

続く

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