反省以前の子ども達②

続きです。

これを見た時のショックは未だに忘れられません。
ある人に見せると、彼は淡々と「写すのが苦手なんですね」と答えたが、そんな単純な問題ではない。

この様な絵を描いているのが、何人にも怪我を負わせるような凶悪犯罪を行ってきた少年であること、そしてこの図の見本が「彼が描いた様に歪んで見えている」という事は、「世の中の全てが歪んで見えている可能性がある」という事なのです。
そして見る力がこれだけ弱いと、おそらく聞く力もかなり弱く、我々大人の言う事がほとんど聞き取れないか、聞き取れても歪んで聞こえている可能性があるのです。

これだけ歪んで見えていたら、あるいはこれだけ歪んだ形でしか表現出来なかったら、この人間社会でコミュニケーションは成り立たないですよね。表面的には日本語が通じている様に見えても、実際に彼の感覚としては、いつも誰かに「どこの国の言葉か分からない言語でまくしたてられている」様な感じなのかもしれない。そら、イライラもするし、意味は分からんし、自分が言う事もやる事も上手く伝わる様には表現出来ないはずですよね。

私は、「ひょっとしたら、これが彼の非行の原因になっているのではないか」と直感しました。
同時に、彼がこれまで社会でどれだけ生きにくい生活をしてきたのか、容易に想像出来ました。
つまり、これを何とかしないと彼の再非行は防げない、と思ったのです。

すぐに少年院の幹部を含む教官達にも見せたが、皆とても驚いていました。ある幹部は「これならいくら説教しても無理だ。もう長く話すのは止めよう」と言ったほど。
すぐに理解してくれたのはいいが、私が意外だったのは、ベテランの教官達が今までなぜ気付かなかったのか?という事です。

気付かずに、「不真面目だ」「やる気がない」と厳しい指導をしていたのか。だとしたら、余計に悪くなってしまう。
実は凶悪犯罪を行った少年の中に、かなりの割合でこういった少年がいるのではないか、それは成人の犯罪でも同じではないのか、と私は感じ始めました。

「ケーキの切れない非行少年たち」(宮口幸治著)より抜粋

障害のある人だけでなくて、勉強が苦手とかスポーツの上達が遅い、体を使うのが不器用、仕事の覚えが悪い、とかもこの能力の欠如が原因である事は多いと思う。人間関係が上手くいかないのだって、人の言っている意味が上手く受け取れないとかいった部分から来ている人はかなりいるでしょうね。

これ、知的な能力って言うよりは、それ以前の身体能力の部類やと思うんですよね。体を使う中で、人間の脳や神経系統は育っていく。

タレントの武井壮さんもこういう事をよく動画でおっしゃっていますが、「自分が今やっている事を客観的に捉える能力」が育っていない人がスポーツ競技の練習をいくらやってもムダなんですよね。その前にやっておく、身に付けておく必要がある能力がある。

有名な世阿弥の言葉、「離見の見」と言われる能力。

自分や他人の動きや態度を的確に捉える力。目の前の現実を正しく、客観的に捉える力。認知能力。

これがこの世の中で生きていく上での土台になる。勉強も仕事もスポーツも対人関係も全てこれがあってこそ。昔は幼い頃から体を使った遊びで、神経系統がしっかり育っていたけど、ゲームとかバーチャルな遊びの中で育ってくると、こういう脳や神経の能力は育たない。ましてや今は食べ物ですら、脳に直接刺激を与える人工甘味料やグルタミン酸ナトリウムとか危険性の高いものが普通に入っていて、社会は脳を狂わせるものに溢れていますしね。国民が気付いて、大企業の利益優先の姿勢は程々にさせておかないと危険だと思う。シュタイナー教育的なものを現代は上手く取り入れていかないと、感覚がきちんと育たない子が大量に育ってくる気がします。あ、別にシュタイナーとかにかぶれなくても江戸時代に戻せばいいだけですよね、いや戦前くらいで十分かな。

前編→【反省以前の子ども達①】

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