「自分を好きになりたい」から人は成長を望む

ボクシングの村田選手のインタビュー記事を読みました。

深く考えさせられるとてもいい記事でした。前にも書いたかもしれませんが、村田選手はボクサーというより、武道家・宗教家的な匂いがしてとても好きな方ですね。

なぜ強くなりたいと願うのか?これは武道や格闘技を志す人は、こういう表現になるけれど、他の表現をするなら、「美しくなりたい」とか「優しくなりたい」「成功したい」「お金持ちになりたい」とかも、その本質は同じなのだと思います。

「成長したい」、もっと言うなら、「”今の自分に欠けている”と認識しているものを補いたい」という欲求なんじゃないかと思うんですよね。

「そもそも“弱い”から格闘家になるんだ」。
村田諒太選手が「ボクシングが強くならない」という相談にアンサー<木曜日の相談室 vol.3>

村田選手に聞いてほしい「わたしが今、壁にぶつかっていること」
ペンネーム:リュウジさん(17歳)
父がボクシングが好きで、村田選手のファンです。自分もボクシングをやっています。でも、全然強くなりません。後から入ってきた後輩にも負けてしまいました。すごく恥ずかしいです。どうすれば村田選手みたいに強くなれますか? 強くなるために大切なことって何ですか?


ボクシングは弱さを克服するツール

「強くなるためには?」ということですが、まず「強さ」って何でしょう?
技術的な強さや、フィジカル的な強さに関するアドバイスは、いくらでもできます。でも、そもそも強さを求めるのは、根本に「弱さ」があるからですよね。僕がまさにそうです。
ほとんどのボクサーはもともと弱くて、「ありのままの自分でいられない」「何者でもない自分は、無価値なんじゃないか」と不安なんです。だからこそ、格闘技で強くなろうとするんですよね。

つまり、「自分は弱い」という劣等感がないと強くなれません。そういう意味では、ボクシングは弱さを克服するツールだと言えますね。

村田選手は本当に正直ですよね。それが彼の魅力、素直さや謙虚さになっているんだと思いますが、本当に強がらない。格闘家やアスリートにありがちな、自分を実際以上に見せようという部分が感じられない。それは今の自分にちゃんと向き合い、「等身大の自信を持っている」から、そして、「自分の弱さや現時点での強さ」といったものをきちんと冷静に分析しているからだと思います。

【「何者でもない自分」を磨く】

「ありのままの自分でいられない」、そう感じた時、人は成長への階段を上ろうと覚悟するのだと思う。これは自分自身もそうでしたね。「誇りに思えない今の自分」、「本当の自信を持っていない自分」。それに耐えられなくて、「他者との比較ではない本当の自信が欲しい」、そう思って武道を始めた様に思います。

人は「飢え」の自覚があるからこそ、それを求める。食欲や性欲や睡眠欲のような本能に準ずるものだけじゃない。人間は、「弱さ、貧しさ、美しさ、知力のなさ、財力のなさ、学歴のなさ」等々、本能よりも上位にあるものへの渇望でも、強烈に動かされる。
「欠けていても、それが気にならない人」は別にそれを求めない。「自分にその力が無ければ、他人の力を借りればいい」と考える。
「欠けている事に耐えられない」何かが、その人を成長させていくためのツールなのかもしれませんね。
生まれた時から、魂が本質的に求めている何か。それがその人の今回生まれた意味であり、運命なのかもしれない。

【満足するのは「地位」を手に入れた時じゃない】

現代人は常に人と自分を比較して自分の立ち位置を気にしますが、それにはキリがない。上には上が居て、下にも下が居る。比較をしている限り、心の安まる時は永遠に来ない。

大事なのは「どんな自分になりたいか」

もし世界チャンピオンや金メダリストを目指しているのでなければ、どこをゴールにするのか、もう一度考えてみてはどうでしょう。
世界チャンピオンになったとして、じゃあ心まで強くなったのかというと、それはまた別の話です。

僕自身、金メダルを獲って、世界チャンピオンにもなった。でも、内面は何も鍛えられていません。むしろ、「地位を失いたくない」「名誉を失いたくない」という弱い気持ちまで出てきています。

まずは、「どんな自分になりたいのか」を考えてみてください。ゴールは人それぞれです。「以前は出来なかったコンビネーションが出来るようになった」「あんなにボコボコにされていた相手に、ここまで戦えるようになった」でもいいと思います。

オリンピックで金メダルを取り、プロで世界チャンピオンになった村田選手は、地位に限って言えば、日本ボクシング史上で一番の名誉を手にしています。しかし、「今も自分には弱さがある」とおっしゃっています。これは、結局、人は他者との比較や地位では、「真の満足感を得る事は出来ない」という事なのだと思います。

内面的な自信、安心感。自分という人間を認められる、受け入れられる。

それは他者と比べた能力や地位にあるのではないし、「他人が自分をどう見ているか、どう評価しているか?」という他人軸ではない、「自分が自分という人間をどう捉えているのか?」という自分軸の部分になってくる。

ボクシングにしろ、他のスポーツや芸術、仕事でも何でも構わないけれど、あくまでそれは自分を磨くためのツール、道具でしかない。その道具を使って、どれだけ「自己の内面を磨いたのか?」「自分の弱さ、醜さと向き合ってきたのか?」。

それが、その人の内なる自信を育ててくれるのだと思います。

村田選手の様に、自分に正直に、弱い自分としっかりと向き合って生きていきたいなと思わされました。

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