脳はエネルギーをお金の様に使う

人間が誘惑に弱かったり、決断を迷う理由。知ると、なるほどなあ~と思うけど、ここは神様に機能をアップさせて欲しいですね。でも、体っていうのは、そう簡単には進化しないもんなんでしょうね。後天的に、生まれた後に努力によって脳のプログラミングを自分自身で行っていくしかない・・・。

【脳はエネルギーをお金の様に使う】

脳には、常にほんの少量のエネルギーしか蓄えられていない。大部分のエネルギーは血液の中に入り体中を巡っているグルコースに頼っている。グルコースを検出する役目の脳細胞は、エネルギーの有無を常に監視しており、足りなくなってくると消費を削減していく。

まず最初にその対象となるのが、自己コントロールだ。脳の中で最もエネルギー消費が激しいものだからだ。エネルギーを節約するため、脳はあなたが誘惑に打ち勝ったり、注意力を集中させたり、感情をコントロールしたりするために必要なエネルギーを充分に与えなくなる。

サウスダコタ州立大学で行われた「エネルギー予算」という自己コントロールの実験。意志力の実験の報酬として、参加者は「翌日に120ドル貰う」か、一ヶ月後に450ドル貰う」か、といった様な選択を迫る実験をいくつか行った。

片方の報酬は常に少ない代わりに、多い方より早く貰える。

心理学者は、これを典型的な自己コントロールの実験と見なした。二つの報酬を、天秤にかけるからだ。

参加者達は「実験が終われば、自分の選んだ報酬が必ず入る」事を知っている。だから、自分が本当に欲しいと思う方を選ぶはず。一回目の選択を行った後、参加者には普通の砂糖入りのソーダ(血糖値を上げるため)か、カロリーゼロのダイエットソーダが与えられた。その後、血糖値を測定し、二回目の選択をさせた。普通のソーダを飲んだ参加者には、血糖値の急上昇が見られた。また、その人達には目先の報酬を我慢して、より多くの報酬を手に入れ様とする傾向が見られた。

反対に、ダイエットソーダを飲んだ参加者の血糖値は下がっていた。そして、少額でもすぐに手に入る報酬を望む傾向があった。ここで重要なのは、選択を決定づけたのは「血糖値の絶対水準」ではなく、「変化の方向性」だった事だ。参加者の脳は考えた。「利用出来るエネルギーは増えているのか?減っているのか?」その上で、エネルギーを使うか蓄えるかを決め、戦略的な選択を行ったのだ。

「腹が減っていると危険を冒してしまう」

体内に蓄えたエネルギーが減っている時に、脳が自制心を発揮しなくなるのには、もう一つ理由がある。私達の脳は、現在とは全く違う環境で発達してきた。食べ物がいつ手に入るか、分からない環境だ。現代人の脳は未だに、血糖値によって、食べ物が手に入りそうかを判断している。

人間の脳がまだ形成期にあった頃は、血糖値が下がる原因は「クッキーを我慢してエネルギーを大量にする」せいではなく、「食べ物が手に入らなかった」せいであった。しばらく何も食べていない状態では、血糖値は下がっている。エネルギーの量を監視している脳は、その血糖値のレベルによって、「すぐにでも何か見つけて食べなければ飢えてしまう」と判断する。

飢えているのにボンヤリしていたり、遠慮している様では、肉をこそげた骨にしかありつけないかもしれない。食料が乏しかった時代には、自分の食欲や衝動に従って行動した原始人の方が、生き残るチャンスが増えた。

現代社会においては「コントロールの喪失」とみなされる事も、実は戦略的なリスクテイキングと呼ぶべき本能の名残と言えるかもしれない。飢えたりしない様に、脳は「危険を顧みない衝動的な状態」に切り替わるのだ。

実際、研究によれば、現代人も空腹の時には、危険を冒す傾向がある。お腹がすいていると、リスクの高い投資に手を出したり、ダイエットをした後は、「パートナー拡大戦略(浮気を心理学者が呼ぶとこうなる)」に積極的になったりする。

残念ながら、現代の社会においては、この本能はもはや利益をもたらさない。体内の血糖値が下がったからといって、飢える恐れがあるわけでもなく、冬を越せない場合に備えて遺伝子を残しておく必要もないからだ。

とはいえ、血糖値が下がると、脳は未だに目先の事だけを考え、衝動的な行動に出る傾向が強くなる。優先事項はエネルギーの確保になり、長期的な目標の基づいた決断どころではなくなる。

ケリー・マクゴニガル

(スタンフォード大学の心理学者・専門は健康心理学)

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飢えていると、脳は生命の維持、種族保存のために、人間界のルールではなく、自然界のルールを守る方へとシフトする。しかし、それは現在の人間界のルールから見れば、ワガママやエゴ丸出しの活動に見える。それは「生命体として生き残る」上では正しい決断だけれど、「獣+神様」という感じの奇妙なニコイチ生物になってしまった今の人類にとっては、致命傷にもなり得るって事ですよね・・・。

本能には逆らえるものではない。

だから、本能が出にくい様に、常に「心に余裕がある状況に身を置いておける様にしておく」というのが、現代人のリスクマネジメントなのかもされませんね~。

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