人は変われる③
しかし、この考え方、あまねく人の「現在」が、「過去」の出来事によって規定されるのだとすれば、おかしな事にならないだろうか?
両親から虐待を受けて育った人は、全て同じ結果、すなわち引きこもりになっていないと辻褄が合わない。「過去が現在を規定する、原因が結果を支配する」とはそういう事だから。
「過去の原因にばかり目を向け、原因だけで物事を説明しよう」とすると、話はおのずと「決定論」に行き着く。
すなわち、我々の現在、そして未来は、全てが過去の出来事によって決定済みであり、動かし様のないものである、と。
過去など関係ない。
それがアドラー心理学の立場である。
では、そのひきこもりの青年は何の理由もなしに外に出られなくなったのだろうか?
過去の出来事など関係ない、となると普通はそう考えるだろう。
彼が引きこもる背景には、何かしら理由があると考えるのが普通だ。
そこで、アドラー心理学では、過去の「原因」ではなく、今の「目的」を考える。
若者は「不安だから、外に出られない」のではない。
順番は逆で「外に出たくないから、不安という感情を作り出している」と考えるのだ。
続く
この「原因論」の否定は、この思考法にこだわる人にとっては非常に都合の悪いもの。
アドラー心理学がなかなか受け入れられない理由はここにあると思いますが、「環境や他人のせいに出来ない」、「全ての理由は自分の物事の捉え方・解釈の仕方にある」という思考法は、自分に甘い考え方を取りたい人にとっては非常に都合の悪いものになりますもんね。