狂気と豊かさ

おお、この人にこの映画を語らせるのか~!と思って見たけど、素晴らしい論評でした。

格闘技、勝負事の視点で見ているのが面白いというか、新鮮ですね。僕も武道・格闘技を長くやってるけど、その視点では見てなかったと思う。本番に向ける気持ちとかは重なる所はあったけど。

「悪魔に魂を売った男の見せる芸」について語っている所は同感ですね。ある意味、そこまで狂える人間しか到達しえない芸というのがあると思う。

全てを平均化、庶民化してしまう今の世の中では、昭和までは合存在し得た「〇〇狂」「〇〇バカ」「キチガイ」といったその当時の褒め言葉が似合う存在は生まれないのだろうなと思います。
今では許されない芸人さん達、横山やすしさんとか凄かったけど、今の時代にああいう芸風を褒めると、コンプライアンスがと叩かれますもんね。

「空手バカ一代」に憧れて、空手を始めた人間としてはちょっと寂しい時代やなと感じます。今の時代は、狂気を求める人だからこそ辿り着ける領域とそれによって優れた文化や技術が生み出される可能性を殺している様な気がします。

そして、後半で語られている人間としての「豊かさ」については、自分も今、指導する側の人間として凄く共感します。
幼い頃から、親の意思、意向で競技などをやらせてはいけない。本人の意思で夢中になってやるのならまだしも、親の圧でやらせると様々な一見ムダに見える遊びや活動の中で醸成されていく、人として豊かになる経験を得られなくなってしまう。

この歌舞伎などの伝統芸能や職人の世界など、ある種、選び抜かれた特殊な世界に生まれた人以外は、普通の経験を積んで人間としての豊かさを得ていく方がいいのだとも思います。

「偏った素晴らしさ」と「調和の取れた素晴らしさ」、これは個人の中では両立しないし、人類全体の中でこの対立した文化を上手く調和させていけばいいんでしょうね。

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