寄生虫「リアル・バオー」
【寄生虫が宿主をコントロールする】
虫や動物の行動を「寄生虫がコントロールする」というのは、よく聞きますが、この記事すごく興味深いですね。
これって、寄生というよりは、「共生」とか「共存」に近くなるんかな?
人間も、皮膚から口内、腸など菌をいっぱい飼って共生していますが、トキソプラズマ以外にも、リーダーにならせる菌とかもおるんかもしれん?って思えてきますね。
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オオカミを群れのリーダーにさせる寄生虫、研究で明らかに
感染するとリスクを取る行動が増加、人類の3分の1超も感染するトキソプラズマ
オオカミに独立を決意させたり、群れのリーダーであることを主張させたりする要因は何だろうか。この疑問は長年、科学者の興味を引いてきた。2022年11月24日付けで学術誌「Communications Biology」に発表された最新の研究によれば、寄生虫トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)に感染したオオカミは、感染していない個体に比べて、群れのトップに立つ可能性が高いという。
この発見は、何が動物の行動に影響を与えるかについて、より幅広く考えることを迫るものだと、研究に参加したキラ・カシディー氏は考えている。氏は米モンタナ州の非営利団体(NPO)イエローストーン・ウルフ・プロジェクトの野生生物学者だ。同団体は米イエローストーン国立公園に暮らすオオカミの研究を統括している。
「行動が、過去の経験や遺伝、現在の状況、社会的背景などを含め、多くの要素の影響を受けることはすでにわかっています」とカシディー氏は話す。「今、そのリストに寄生虫が加わりました」
トキソプラズマは単細胞の寄生生物で、常時、全人類の少なくとも3分の1が感染しているとされる。通常、症状は軽度だが、子どもや免疫抑制状態にある人にとっては、命取りになる場合がある。トキソプラズマはネコ科動物の腸内でしか繁殖できないが、自然界には広く存在し、あらゆる恒温動物に感染する。また、宿主を操ることで知られており、特に、ネズミが感染するとネコを恐れなくなることで有名だ。
トキソプラズマは単細胞の原虫で、ほぼすべての恒温動物に感染する。
今回の研究で、カシディー氏らはイエローストーン国立公園に暮らすオオカミの26年間にわたる行動データと血液サンプルを利用した。イエローストーンには1995年にオオカミが再導入されており、それ以降のデータとなる。また、氏らは公園内に暮らすピューマの分布と血液サンプルも分析した。ピューマはトキソプラズマの宿主であることが知られている。
その結果、生息域がピューマと重複しているオオカミは、ピューマが近くにいないオオカミに比べて、トキソプラズマに感染している割合が高いことが判明した。
さらに、トキソプラズマに感染しているオオカミは、感染していないオオカミに比べて、群れから離れる割合が約11倍、群れのリーダーになる割合が約46倍も高かった。
英ロンドンにある王立獣医科大学(RVC)の疫学者グレゴリー・ミルン氏は、今回の研究には関与していないが、これらの結果にそれほど驚いていない。
「他の動物がトキソプラズマに感染した場合について知られていることとかなり一致しています」とミルン氏は話す。「この寄生虫が有意な行動の変化を引き起こすことを示す証拠がまた一つ増えました」
命知らずの行動を引き起こす
トキソプラズマに感染している動物を食べたり、ネコ科動物のふん便中に排出される卵のような状態の「オーシスト(胞嚢体)」と接触したりすると、トキソプラズマに感染することがある。
トキソプラズマは、ネコ科動物以外の宿主に寄生した場合、脳を含む体のさまざまな部位に侵入し、そこに何年もとどまることができる。しかし、繁殖するにはネコ科動物の腸内に入り込む必要がある。トキソプラズマは、そのためにいろいろな賢い方法を進化させてきた。(参考記事:「宿主をゾンビ化して操る 戦慄の寄生虫5選」)
例えば、トキソプラズマに感染したネズミは、より活発に行動し、ネコをはじめとする捕食者のそばにいることを恐れなくなるため、トキソプラズマは望みをかなえやすくなる。トキソプラズマに感染したマウスやラットは、ネコの尿に対する恐怖心を失い、そのにおいに引き寄せられることさえある。
これらのげっ歯類に関する発見の多くは、注意深く管理された実験から得られたものだ。その一方で、野生動物でトキソプラズマの影響を調べる研究が始まったのはごく最近だ。
トキソプラズマはネコ科動物の腸内でしか繁殖できない。写真は英国のキャットショーで撮影したブルーのスフィンクス。(PHOTOGRAPH BY SHIRLAINE FORREST, GETTY IMAGES)
トキソプラズマはネコ科動物の腸内でしか繁殖できない。写真は英国のキャットショーで撮影したブルーのスフィンクス。(PHOTOGRAPH BY SHIRLAINE FORREST, GETTY IMAGES)
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2016年2月に学術誌「Current Biology」に発表された研究では、トキソプラズマに感染したチンパンジーは、天敵であるヒョウの尿に引き寄せられることが判明した。また、米ノバ・サウスイースタン大学の進化生物学者エベン・ゲリング氏によれば、トキソプラズマに感染したハイエナの子どもはライオンに近づきやすくなり、結果として、殺される確率が高いという。(参考記事:「寄生虫がハイエナを「操作」、ライオンに襲われやすくなると判明」)
「トキソプラズマ感染による行動の変化が集団の力学や行動にどのような影響を与え、生態学的な結果をもたらすのかについては、まだ研究が始まったばかりです。げっ歯類で知られ始め、野生動物で確認され、今ではハイエナやオオカミなどの高度に社会的な動物で見られるようになりました」とゲリング氏は話す。
ヒトも「恐れ知らず」に
トキソプラズマに感染している人は、感染していない人より多くのリスクを取ることを示唆する証拠も集まりつつある。例えば、トキソプラズマに感染している人はより危険な運転を行いがちで、しばしば死亡事故につながることが示されている。
とはいえ、必ずしもマイナスの影響ばかりではない。大学生と社会人を調査対象とし、2018年7月に学術誌「英国王立協会紀要B(Proceedings of the Royal Society B)」に発表された研究論文では、トキソプラズマに感染している人はビジネスを専攻したり、起業したりする割合が高いという結果が出た。また、感染率が高い国では、新たな起業活動を妨げる要素として「失敗への恐怖」を挙げる人が少ない傾向にあった。
マラリアの遠い仲間であるこの寄生虫が、どのように哺乳類にこうした変化を引き起こしているかは、正確にはまだわかっていない。
ミルン氏によれば、トキソプラズマがドーパミンなどの神経伝達物質やテストステロンなどのホルモンに影響を与えることを示唆する証拠がいくつかある。また、トキソプラズマが引き起こす軽度の炎症が、行動に影響を与えている可能性もあるという。
いずれにせよ、トキソプラズマをはじめとする寄生虫は動物の生活において、今はまだ正当に評価されていない重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある。動物種の約40%は寄生虫だと推定されており、おそらく未発見の種の大部分を占めている。(参考記事:「寄生虫を積極的に守るべき理由、多くが絶滅の危機に」)
「私たちの行動は、皆が想像しているよりはるかに多くの部分が、この寄生虫の影響を受けている可能性があります」とゲリング氏は述べている。
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昔、荒木飛呂彦先生の「バオー来訪者」っていうマンガがあったんですけど、それが人間に寄生して兵器化させるために闇の組織が人工的に開発した「バオー」という寄生虫の話やったんですよね。
それを思い出しました。「おお、リアル・バオーやな!」って。僕にとっては、荒木飛呂彦先生の一番の傑作なんですよね。
このシーン、めっちゃ感動したところ。
今、この絵だけを見ても、当時の感動が蘇ります。