【誉める指導法の弊害】

一時期、すごく流行り、もう今ではすっかり定着した感のある「“誉める”教育・指導法」。

色々な人と話していると、これを実践している人が結構多くて、しかもその弊害をご存じでない方が多いですね。

誉める教育は、一時的、短期間では効果を発揮する事が多く、一見すると素晴らしいのですが、「長期的に見ると弊害がある」というよりも「弊害の方が大きい」という事が知られていません。

色々な角度から深く教育や脳を捉えている本を読んでいると、脳科学的に見れば、それは既にハッキリしているそうなのですが、なぜかそういった内容は世間には余り知らされていない様です。アドラーがずいぶん昔に言っているのに、本が売れている割にはあまり知られていませんよね、なるべく広まらない様にわざとしているんじゃないかって気もする程です。

タバコが悪いとか、お酒が悪いというのと同じレベルで、脳の構造上から分かっている事らしいので、簡単に書いてみたいと思います。より詳しく知りたい方は、ネットや図書館で専門書を読んでみられる事をオススメします。

まず、脳は基本的にいつも報酬を求めている。

だから、脳が判断する基準は、いつも「快・不快」です。

当たり前ですが、「不快」をわざわざ選ぶ生物はいないので、人間も勿論、選択の基準は「快」を選んでいる事になります。

しかし、ここで恐らくほとんどの人は疑問を持たれると思います。

「いや、仕事や勉強、スポーツでも、わざわざ厳しい方、困難な方を選ぶ者がいるではないか?」と。

しかし、それは勘違いなんですね。というか、短期的に見ているからなのです。

その一見すると、困難な方を選んでいる人は、やはり快を選んでいるのです。

ただ、見ている範囲、距離が違うだけなのです。

短いスパンで物事を見る人からは、一見「損に見える=不快」だけれど、

長いスパンで見ると、「得をする=快」だから、そちらを選んでいるに過ぎないのです。

そして、それが「誉める」事とどう繋がっているかというと、

脳は快を常に求めているため、「誉める」という快を先に与えて、それに幼い内から慣れてしまうと、そういう「短期的な快を求めるシステム=回路」が脳に組み込まれてしまうのです。

これは、お酒やスイーツ、タバコを求めるのと全く同じシステムであり、いわば中毒=ジャンキーを作るシステムと言う事も出来ます。

脳に中毒になる回路を作っている、という事になりますね。

「言葉」により誉められると、「言葉は物質ではない」にも関わらず、甘いものやお酒を飲んだ時と同じ様に、脳の中には「快楽ホルモン」が発生します。人の脳は「他人からの称賛」を求める様に出来ているのです。これは本来、生物が危険を避けて安全に生きていくために、作られた脳の仕組みであって、自分の意志ではコントロール出来ません。

大昔ならよかったのですが、近代社会になって、人間の脳にセットされたこのシステムが分かって以来、このシステムを悪用というのか、利用する構造が社会には沢山あるのです。

その仕組みを使った一例が、酒・タバコ・スイーツといったものであり、だから、これらは自分の意志で止めるのは非常に難しいわけです。覚醒剤などのドラッグも全く同じです。脳を依存=中毒にさせてしまうのです。

誉め言葉もこれと、脳の中におけるシステムとしては同じで、この快楽にはなかなか抗えません。ついつい誉め言葉を求めてしまう様になるのです。まさに中毒者=ジャンキーですよね。

これは人間の脳内にセットされているシステムであり、これを利用した物が世間には溢れています。

お酒やタバコ、スイーツは勿論、パチンコやゲームでの快感もこのシステムを利用していますし、SNSで「いいね」を求めてしまうのも同じで、他人からの称賛を求める脳内のシステムが作用しているのです。

この仕組みが幼いうち、あるいは若いうちに出来上がってしまうと、その人は他人の言葉=称賛に依存する癖=中毒となってしまいます。自分の意志よりも、まず他人の称賛を求めるシステムが脳に出来上がってしまっている訳ですから、なかなかこの仕組みには抗えなくなるのです。

こうなると、その人が行動を決める際の基準は、自分の意志よりも、他人の意志の方が重要という事になってしまいますね。これは言い換えれば「他人によって、自分の行動をコントロールされている」という事であり、もっとキツイ表現をするならば、「支配されている」という事にすらなる訳ですね。

こういった内容は既に分かっている事であり、だから「危険である」という事を述べている方もちゃんと居られます。

しかし、今の世の中はこの脳の報酬系システムを利用した教育や食べ物、嗜好品などのビジネスといったものが主流であるため、なかなかこういった事実は広まりません。これらが知られると都合の悪い人達がいるんですね。

現代社会は、一見すると、とても便利で、清潔で、安全に見えるのですが、その裏側にあるこういった危険性にもきちんと目を向けておく事は必要ではないかと思います。

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