言葉と行動こそが、自分の心
人は無意識の内に心の中にある規範を繰り返して生きていくもの。
物心ついた頃から、こういうきちんとした躾を受けているかどうか?は、その人が成長すればする程、差がついてくるでしょうね。
自分の心の内にあるモノに、ウソをつき続けていく人と、そのエゴと葛藤し続け、闘い続けていく人では時が経てばその内面は大きく違ってしまう。
以下転載
●致知出版社の人間力メルマガ 2022.7.8
───────────────────
最新刊より「母を語る」という連載がスタートいたしました。
記念すべき第1回にご登場いただいたのは、シンガーソングライターの長渕剛さん。
……………………………………………
「僕の中に脈々と生き続ける母の魂」
長渕 剛(シンガーソングライター)
……………………………………………
――長渕さんにとってお母様はどういう存在ですか?
どう振り返っても、母は僕の師ですね。
僕が生まれる前に兄を生後間もなく亡くしていますので、
念願の男の子だったと思います。
当時は高度経済成長の走りの頃で貧しかったですし、
僕は非常に病弱なガキでした。
父は警察官で地域のために一所懸命外回りをしていましたから、
ほとんど家に居ない。
母から影響を受けたっていうか、ほとんど母子家庭みたいなもんです。
一番厳しかったのは、「嘘をつかない」ということですね。
――ああ、嘘をつかない。
小学生の時に習い事をサボったことがありました。
その嘘が母にバレて、そういう時は
決まって三回問い詰められるんです。
神仏の前に正座させられて、
「行ってないよね」と聞かれて「行った」って答える。
「二回目、聞くよ」
「いや、ちゃんと行ったんだ」。
で、三回目になると
やっぱり良心の呵責というか、
三回も嘘をつくのかと後ろめたくなって、
「嘘だよね」って言われた時に黙っちゃう。
そうすると、真っ暗な押し入れの中に一時間くらい放り込まれた後、再び神仏の前に正座させられ、母が
「心はどこにある」
と聞くんです。
僕は
「……うーん……どっか、このへん」
と自分の胸の辺りを指します。
すると母は、ビシッと、
「どこだか分からないから、
自分の心を示すために言葉と行動があるんだよ!
言葉と行動そのものがあんたの心!!
覚えておきなさい」
と言うんです。
―― 含蓄に富んだ教えです。
だからといって、生涯嘘をつかないで生きてきたわけじゃないんですが、ただやっぱり人が不幸になる嘘ってありますから、それは小さい頃から言わないようにしてきました。
それから母は苦しい時や悲しい時に、よく歌を口ずさんでいました。
童謡です。
おそらく僕のDNAに刻み込まれているメロディーっていうのは、母を通して聴いた童謡が非常に大きく影響しているんじゃないかなと思います。
――お母様の歌っていた童謡が長渕さんの音楽家としての原点なのですね。
家の近くにある小高い山の畦道を登っていくと水源地があって、は父と喧嘩をしたりすると、僕を連れてそこに行くんです。
いまでもその情景が目に浮かびますけど、切り株に腰を下ろして童謡を歌ったり、自然を眺めたり、つくったおにぎりを食べさせてくれたり、夕焼け空になるまでじっと佇んでいる。
父は国家公務員とはいえ、給料は本当に安かった。
母はそんな中で姉と僕を育てながら家庭を切り盛りしなければならない。
だから、金銭の苦労、それに伴う父との諍いは絶えなかったんでしょう。
その時の母の背中とか歌声、夕焼けの茜色、そういったものが子供心にも悲しいほど切なく感じられました。
よく、見た目に出ている行動ではなく、自分の心を見て欲しい」とか言うけれど、本気でそう思うのなら、それが他人の目にハッキリと見える様に「言葉や行動に表す」事が必要っていう事ですよね。
現実には難しい事もあるけれど、でもそうしないと他人には分からないものやし、「自分の心の内を他人に推し量って欲しい」というのは甘えに過ぎないんですよね。