「反省以前】の子ども達①

「ケーキの切れない非行少年たち」(宮口幸治著)より、気になった所を抜粋して紹介します。

医療少年院は、少年院版特別支援学校といった位置づけ。全国に三か所あり、非行のタイプは窃盗・恐喝・暴行・障害・強制猥褻・放火・殺人まで、ほぼ全ての犯罪を行った少年達がいる。
私が勤務していた医療少年院にもほぼ全ての種類の飛行・犯罪を行った少年たちがいた。当初はとても恐ろしく感じたが、よく見ると少年達の表情はそこまで暗くはなく、むしろ穏やかで、近くを通ると元気よく挨拶してくれた。

少年院で「手がかかる」というのは、学校で「手がかかる」というのと次元が違う。
ちょっとした事でキレて机や椅子を投げ飛ばし、強化ガラスにヒビが入る。いったん部屋で暴れると非常ベルが鳴り、50人はいる小区員全員がそこに駆け付け少年を抑えつけ制圧する。

そんな話を聞いていた少年の診察に、内心びくびくしながら臨んだ。どんな凶暴な少年が入ってくるのかと思っていたら、小柄で痩せていて大人しそうな表情の、無口な少年でした。こちらの質問にも「はい」「いいえ」位しか答えない。
あまり会話が進まないので、Rey複雑図形の模写という課題をやらせてみた。 (貼ってある写真の上部の図)

これはある複雑図形を見ながら、手元の紙に写すという課題。神経心理学検査に一つで認知症患者に使用したり、子供の視覚認知の力や写す際の計画力などを見たりする事が出来る。

彼はすんなりと取り組んでくれたが、そこで生涯忘れ得ない衝撃的な体験をしました。
彼は黙々とこのようなもの(写真参照、下部の図)を描いたのです。

。反省以前の次元にある子、認知する能力が決定的に欠けている子がいる現実。知的な障害の場合もあるでしょうけど、後天的につけるべき能力が環境の悪さから獲得出来ていない子も多いと思う。

今の教育や福祉の世界って、そういう根っこの問題を見ずにすぐにっ手っ取り早く投薬するパターンが多い。実際に自分自身でそういう姿をいっぱい見て来ました。これは本当にマズイと思うんですけど、それを素直に聴いてくれるスタッフや関係者には、残念ながら僕はほとんど会った事がないんですよね。

続く

後編→反省以前の子ども達②

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