「力量」をつけるには?

とてもいい記事。「危険を排除しない」という所も凄く大事な話ですが、後半の部分「力量」について書かれたところは特に響きました。

力量。

人間力と言い換えてもいいと思うんですが、トレーニングやダイエットを指導していて、ここに書かれている人間としての「力量」のある人ってすぐに分かるんですよね。そういう人って、「創意工夫」が出来る。

こっちが話した事に対しての、リアクションが力量がある人とない人って全く違うんですよね。

まずは前半部分、「危険を排除しない」大切さについて。

過保護はNG! 子どものうちに体験しておくべき「小さな危険」

危険を排除した環境で子どもはどう育つ?

TOKYO PLAY代表理事・嶋村仁志さんによると、幼いうちから「小さな危険」を伴う遊びをきちんと体験することが重要だといいます。子どもをどんどん危険から遠ざける昨今の傾向をふまえて、危ないものはすべて排除するような環境で育つ子どもの将来を危惧している嶋村さんは、次のように述べています。

そんな環境で育った子どもは、チャレンジできないまま体だけが成長し、本当の危険や恐怖を実体験のなかで得ることができない。そうなると、自分の痛みを知らないばかりか、他人の痛みにも共感することができないのです。それは、子ども自身はもちろん、その周囲の人間にとっても危険なことでもあります。
(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|大切にしたい遊びの“リスク”。子どものチャレンジを支える遊びのルールとは?

高さの感覚は5歳までに80%が育つといいます。もし幼少時に高いところに登らせてもらえずに、「高いところはこわい」という感覚をもてないまま中高生になったとしたら、悪ふざけのつもりで命が危険にさらされるようなことをやりかねないのです。
小さいうちに危険を体感し、成長した後により大きな危険を招かないようにすることこそ、大人として子どもに教えてあげるべきなのではないでしょうか。

自分が体験していない事には、「ミラーニューロンが働かない=想像できない」状態になりますもんね。それはすごく怖い事だと思います。思いやりとか道徳心というのは、「体=脳と神経系統の地図」から成り立っている。体の中に入っていないデータ、頭で知っているだけのデータには、人の心は関知しないのだと思うんですよね。

だから、「いじめはダメ」とか「人に親切にしなさい」と文字や言葉で教わっても、頭での理解を越えられず、心には届かない・・・。

子どもが体験するべき“危険なこと”とは?

2007年、TEDで話題になった講演があります。それは「子どもがすべき危険なこと」についてです。この講演では、子どもたちに対する安全規制の行きすぎに言及し、「あえて危険なことをやらせて、安全な環境を自分でコントロールする術を学ばせるべき」という提案をしています。

プレゼンターは、コンピューター科学者でティンカリング・スクール創設者でもあるゲイバー・タリー氏です。“ティンカリング” とは、楽しみながら機械をいじり、修理、改造、発明をするという意味。その教室では、自分の手でなにかを作ることの楽しさを子どもたちに教え続けています。
タリー氏は講演の中で、アメリカで製造されたり販売したりしている製品につけられたすべてのビニール・フィルムに、『窒息注意』の警告が書かれていることを嘆き、安全ゾーンの範囲を狭めることで、身のまわりの世界との接し方を学ぶ貴重な機会から遠ざけていると危惧しているのです。

もちろん、子どもたちを危険から守ることは必要です。(中略)しかし、それが過保護になってしまっては、子どもたちの危険に対する判断力が養われず、社会の責任が果たせません。私たちがするべきなのは、未知のもの(またはよくわからないもの)と、本当に危険なものとの区別をつけられるよう、子どもたちに学ばせることです。

ある程度、安全を確保した上で、「コントロールされた状態で危険な目に遭う」というのは、本当に大切だと思います。カラダは危機感を味わった時に、はじめて本当の意味で学習しますしね。

そして、ここからの後半部分が特に感じ入った所です。日々、人へトレーニングなどを指導していて、凄く感じる部分なんですよね。

タリー氏は、子どもに「力量」をつけさせることこそがもっとも重要だと述べます。ここでいう「力量」とは、“現実世界で困難な問題に遭遇したときに、うまく対処できる力” です。「力量」がない人は、簡単でわかりやすい対策が見つからないとすぐにあきらめてしまう傾向があり、最初の失敗でくじけてしまうことが多いそう。

■力量が高い人の特徴

問題の前後関係を調べ、必要な道具と素材を探し、いくつかの対策を考えることができる。
障害を乗り越える力があり、失敗を教訓として役立てることができる。
物をいじくり回して仕掛けを探るくせがある。
よく質問をし、答えが得られないときは自分で答えを見つけようとする。
深くはなくても広範な知識を持っている。
自分に自信を持っている。
 
このように、どんな状況でも何が起きても対処できることが自信につながるというわけです。

その力量を身に付けるための具体例をあげておられます。

その「力量」をつけるために、タリー氏は著書で『50の危険なこと』をするべきだと提唱しています。その中からいくつかご紹介しましょう。

○高いところから落ちてみよう
落ち方を習得することで、地面から受ける衝撃を上手に逃がすことができます。安全に飛び降りる方法を心得ておけば、高所でパニックに陥ることも少なくなるでしょう。

○家電品を分解しよう
魔法の箱のように思われている家電製品の中身がどうなっているか、知りたくない子どもはいません。不要になった電化製品を分解してみると、ひとつひとつの小さな部品にも役割があることがわかります。そしてどんなに複雑なものでも、その一部がわかれば最終的には全体を理解できるようになるはずです。

○ナイフで削ろう
道具を使いこなす技能を高めるには、“実行して結果を見る” という繰り返しの行動が重要です。力を入れすぎないこと、一度に厚く削ろうとしないこと、ナイフの刃が届くところに人がいないこと、必ず自分から向こうに向かって刃を動かすこと。これらの約束は必ず守らせましょう。

○レシピ本に逆らおう
新しいものを発明するためには、実験、テスト、改良という過程を踏む必要があります。自分だけのレシピを作り出すことで、台所がより身近な場所になるでしょう。好きな材料を集めて、混ぜ合わせたら美味しそうだと思う組み合わせを考えます。小麦粉やバター、卵、チョコレートなど、分量は自分で考えて、すべて混ぜたらオーブンで焼き上げます。

シュタイナー教育でもそう感じますが、なるべく自然なものや原始的な道具を使って、「自分の力や工夫でするしかない」という状況を味わっておくのが大切なんじゃないかなと思います。

そして、以下の所、凄く大事やと思う。

子どもの自信は「刃物」と「火」によって育つ!?

小さいうちは遠ざけがちな「刃物」と「火」。ただしこれらは生きていくために必要不可欠であり、早いうちから身につけておくことでさまざまなメリットをもたらします。食育・料理研究家の坂本廣子さんも、「刃物と火を扱えるようになれば、これほど子どもの自信につながる体験はない」といいます。

理屈じゃない部分やと思うんですよね、これって。

「危険なものを扱えるようになった自信」って、精神的に凄く大きなものを与えるのだろうと思います。

それは脳の原始的な部分、根底的にある部分を刺激するのかもしれない。

文明人になる以前の野生的だった頃の、野獣がいる中で逞しく生き延びていた頃の人間本来の生命力を引き出せるのかもしれませんね。

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