「競技」は心を育てる手段

最後は人間力。

「試合の勝ち負け」にばかり意識が行っている道場やジム、チームは人間性が歪んでいくのを目の当たりにしていました。

他人の成功を心から喜べない歪んだ心の人間が育ってしまうんですよね。

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致知出版社の人間力メルマガより転載

 2023.12.11

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卓球界で小さい頃から注目を浴びながら世界で活躍する平野美宇選手。

その母である真理子さんは三姉妹を育てる傍ら、卓球教室を開き、競技力だけではなく人間力を育てることを大切にしているといいます。

同じく「メシが食える大人を育てる」

という理念のもと、全国に360校以上の「花まる学習会」をつくってきたのが創業者である高濱正伸氏です。

現在発行中の『致知』最新号では、お二人にご自身の子育てを振り返りつつ、教育で最も大事なことは何か、縦横に語り合っていただきました。

その一部をご紹介いたします。

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[高濱]

平野さんは卓球を教えるノウハウはどこで学んだのですか?

[平野]

まず一つは、中学生の頃から選手として続けてきた自分自身の経験。それから筑波大学の体育専門学群に進学したので、周りには卓球推薦で入学してきた強豪選手がいました。

周りの練習を見て、強い選手はどんな練習をしているのかを間近で勉強できたことが大きかったですね。

教員時代には卓球部の顧問として部員に的確な技術指導をするため、地元のクラブチームにコーチとしてボランティアで参加し、

指導法を勉強させてもらいました。

その時はまさか自分が卓球クラブを立ち上げるとは思っていませんでした(笑)。

人生、何がいつ役に立つのか分からないものです。

[高濱]

それで平野美宇選手という、オリンピックに出場する逸材を輩出したのは本当にすごいですよ。

しかも平野さんの場合はそれだけではなくて、八十人規模の教室の運営をして、三人の子供も育てている。

もともと教師をしていた経験も大きいんでしょうね。

[平野]

そうかもしれません。

外から見れば普通の卓球クラブかもしれませんが、私としては卓球はあくまで媒体の一つで、人間教育にこそ重点を置いています。

[高濱]

ですよね。全員がオリンピックに行けるわけじゃないから。

[平野]

そうなんです。むしろほとんどの子が広い意味では趣味ですよね。いま卓球でご飯を食べているのは美宇と美宇の従兄弟の二人だけです。

だから技術的な指導はもちろんしますが、それ以上に人間力を育むことを大事にしています。

卓球がいくら強くても、人間的に愛されなければ絶対に幸せな人生は送れませんから。

例えば、この土日にも試合があったのですが、ある子が試合に負けてわんわん泣いていたんです。

その時にどうして負けたのかを考えさせることも大事ですし、

しばらくは泣かせてあげても、次の試合が始まったら

「もし自分が勝ち残っていたら、仲間にどうしてほしい?」

と質問して、まだ戦っている仲間を応援しようと自分で気づけるように導いてあげるんです。

これは一例ですけれど、こうした一連の体験の中で子供たちは人間関係を築き、成長していくのだと思います。

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