コミュニケーション力について

人に教える、伝えるという事が仕事なので、この伝える力=コミュニケーション能力については、もういつも四六時中といっていい程、考えています。自分が教える内容をどれだけ自分が分かっていたとしても、相手の性格、今の心情、置かれている状況、知的レベル、感情のコントロールが上手いか下手か、といった事をこちらが理解出来ていないと、全く上手くいかない。

本来なら通じるものも通じない、という事が起こってしまう。

人間には、「心」と呼ばれるものがあるけれど、ではそれが何なのか?

心の正体は何か?と問われて即答出来る人はほとんど居ない。


そんな、よく分からない「心というモノ」を相手にして物事を伝えるのだから、事前にしっかりと準備していなければ、伝わるわけがないと思う。心とは、分かりやすく言えば感情、脳で言うなら人間脳(大脳新皮質)ではなく、その下にある動物脳(感情脳)といってもいいと思う。

理屈で伝わる部分ではなく、感情で交流すべき部分。

ここをしっかりと分離して認識し、その上で伝える際には統合して上手く組み合わせて伝えると相手の理屈の脳と感情脳にバランスよく行き届くのではないかと思う。

以下、「コミュニケーション力」齋藤孝(明治大学教授)著 に、それに関して凄く参考になる部分があったので紹介してみたいと思います。

まずはコミュニケーションの定義について。

コミュニケーションという言葉は、現代日本に溢れている。この力の重要だという認識は、とみに高まっている。プライベートな人間関係でも、仕事でも、コミュニケーション力の欠如からトラブルを招く事が多い。
仕事に就く力として第一に挙げられるのも、これである。
コミュニケーションが上手く出来ない人間とは付き合いたくない、一緒に仕事をしたくない、というのは一般的な感情だろう。
 
では、コミュニケーションとは何か。
それは、端的に言って、「意味や感情をやり取りする行為」である。
 
一方通行で情報が流れるだけでは、コミュニケーションとは呼ばない。ニュースを見ている行為をコミュニケーションとは言わないだろう。
「やり取りする相互性」があるからこそ、コミュニケーションと言える。

次はコミュニケーションの中身について書かれた部分。

ここをしっかりと認識出来ている人が少ないのが、人間関係のトラブルがよく起こる原因だと思う。

やり取りするのは、主に「意味」と「感情」だ。
情報伝達=コミュニケーション、という訳ではない。情報を伝達するだけではなく、感情を伝え合い、分かち合う事もまたコミュニケーションの重要な役割である。
 
何かトラブルが起きた時、「コミュニケーションを事前に十分取るべきであった」という「言葉がよく使われる。
一つには、細やかな状況説明をし、前提となる事柄について「共通認識を沢山作っておく」べきであったとう意味である。
もう一つには、情報のやり取りだけではなく、「感情的にも共感出来る部分」を増やし、「少々の行き違いがあっても、それを修復出来るだけの信頼関係」をコミュニケーションによって築いておくべきであった、という事である。
 
 
「意味と感情」、この二つの要素をつかまえておけば、コミュニケーションの中心を外す事はない。
情報という言葉は、感情の次元をあまり含んでいない言葉だ。情報伝達としてのみコミュニケーションを捉えると、肝心の感情理解が疎かになる。人と人との関係性を「心地よく濃密にしていく」事が、コミュニケーションの大きな狙いの一つ。
従って、「感情をお互いに理解する」事を抜きにすると、トラブルの元になる。
 

「理屈のみ」のいわゆる左脳タイプと、「感情先行」の右脳タイプ。

この二つの種類の人間が話し合うと、もう話が全くかみ合わない。

全違う次元での会話になっているから、同じ日本語なのに会話が成立していない(笑)という状況になってしまう。

以下は、そうはいってもそれを上手くこなしている人っているよね~という話。

仕事上のやり取りで、一見、情報だけを交換している様に見える時がある。
そういった状況でも、「感情面に気を配ってコミュニケーションしている人」と、「そうでない人」とがいる。
両者の間では、仕事の効率や出来・不出来に違いが出る。
 
人間は「感情で動くもの」だ。
 
情報交換をしている時でも、「同時に感情面での信頼関係を培う」事の出来る人は、仕事がスムーズにいき、ミスもカバーしやすい。
トラブルが修復不可能にまでなる時には、必ずと言っていい程、感情の行き違いがある。
 
コミュニケーション力とは、「意味を的確に掴み、感情を理解し合う力」の事である。

「感情」と「意味」の座標軸

この表が凄くええやんと思ったので、紹介したかったんですよね。

人とは話す時に、この座標軸を頭に置いて置くと、相手のタイプや心情、何を伝えようとしているのか?が分かりやすいし、自分自身が今どういう状況なのかも分かると思う。

コミュニケーションとは何かを理解しやすくするために、座標軸で考えてみよう。

X軸として「感情」。
Y軸として「意味」を取る。
 

本にあった表が小さかったので、手書きで書いてみました(レシートの裏ですいません,笑)

Aゾーン
意味と感情の両方をやり取り出来ているコミュニケーション良好ゾーン。
 
Bゾーン
意情報は交換されているが、感情のやり取りはしていない。仕事の場などがこれで、しっかりと意味を通じ合わせる必要がある場面。
仕事では、しっかりとした意味のやり取りが何よりも大事。意味を取り違えれば、どんなトラブルが起こる。
 
Cゾーン
感情のやり取りを行う領域。家族や恋人の様な関係において重要。
恋人同士では、何気ない事でも笑い合え得るし、盛り上がる。それは会話の中身に大した意味はなく、「感情だけがやり取り」されているから。
その様な関係においては、意味を生産していく関係ではなく、感情を確認し合い強固にしていく事が重要なのである。
 
Dゾーン
意味も感情もやり取り出来ていないコミュニケーション不全ゾーン。
互いの意思を聞き合い、相互調整する事を放棄した状態。感情的にも、憎しみだけで向き合っていて、やり取りはない。
コミュニケーションへの意志を完全に失った状態が、絶交状態、戦争状態である。
 

一概には言えないけれど、男性・左脳タイプは、「意味のみ」で、「感情」の交流が出来ていないタイプが多いですよね。

会話は情報のやり取りであって、そこに相手との感情のやり取りは余りなく、それの必要性を感じない。

反対に、女性・右脳タイプは、感情の交流こそ大切と思っているから、そこに理屈や整合性はそれほど求めていない。

理論の正しさよりも、お互いの心が通い合う事を欲している。

もう全く正反対。

カップルが別れるのや離婚などは、恐らくこれが原因である事が多いのだと思います。お互いの脳が求めているものが、全く違うのにそれがお互いに認識出来ていないし、それをお互いに伝え合う事すら出来ていない。

男と女は、別の惑星の生き物である、という説が合ったりしますが、本当にその位、大切にしたい価値観が異なっている。勿論、男性でも感情脳を使えるタイプ、女性でも理論脳を使えるタイプがいる訳ですけど。

人間関係のトラブルを防ぐ、あるいは修復するためにコミュニケーション力が必要となる。「どこがずれているのか」という事に敏感になる事が、コミュニケーション力向上の第一歩である。
自分は、相手が伝えようとしている「意味」をしっかりと受け取っているのか、こうした問いを常に自分に投げかけていると、失敗が少ない。そのためには、相手の言う意味を「自分で再生して確認する」のが最上の方法。「おっしゃられているのは、・・・という事ですね」と確認してみる。そうする事で、意味のズレをハッキリとさせる事が出来る。
 
意味がずれる事が問題なのではない。ずれている事に「気付く感覚」が大事なのである。意味のズレを微妙に修正していくプロセスを共に踏む事で、信頼関係は強まっていく。

男女に限らず、相手の脳のタイプを理解し、そしてもちろん、自分の脳のタイプもしっかりと理解した上で、今相手が何を言おうとしているか、伝えようとしているか?を考えていけば、ある程度、お互いに理解し合う事は可能になるのだろうと思います。

ただ片方だけがあゆみ寄っても、それは無理があるから、お互いに歩み寄る意識がないと難しい。いつも片方が譲るという構図になってしまうと、いずれその関係は破綻する。

そして、それは何かトラブルが起こってからでは遅い。何もない時、日頃から、常に理論の前に感情面での交流をしておいた上でなら、何かが起こった時にも、最低限の信頼関係があるから、いきなりその関係性が壊れてしまうといった事は避けられるのではないかと思います。

それは例え、仕事における関係であったとしても、人間的な交流がベースにあって、その上で仕事における情報のやり取りをしていくのがベストなのではないかなと。

理屈だけの関係は、何かトラブルが起こった時に非常に脆いと思うんですよね。

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