くしゃくしゃの一万円札

他者との比較ではない、こういう絶対的な感覚を持てれば、人は迷わずブレないのだと思います。
でも今の社会って、人を迷わせる様に、大いなるものと繋がらせない様に仕組まれているから難しいんですよね。

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【くしゃくしゃの一万円札】

ある講演会でこんなちょっとした「実験」をした事があります。
「どなたか、新札のきれいな一万円札を大内の方はいらっしゃいませんか?」
こう壇上から呼びかけると、一人の紳士が手を挙げて前へ歩み出てきて、一枚のお札を渡しました。
私はその一万円札を会場全体にかざす様にして言いました。
「ご覧の通り、きれいな一万円札ですね。では、ちょっとお借りしますね」
そういって、そのお札をくしゃくしゃに丸め始めました。紳士はぎょっとした表情を浮かべました。他の聴衆も、唖然として私の行為を見守っています。

そのお札を徹底的にくしゃくしゃにしてから、言いました。
「あんなにきれいだった一万円札が、こんなになってしまいました」
そして、次にしわを伸ばして広げて聴衆に見せました。
「でも、広げてみると一万円札ですね。誰か、欲しい人はいますか?」
すると、慌てて紳士が手を挙げました。

「勿論です。だって私の一万円札ですよ」
「でも、もう新札じゃなくなってしまいました。さっきはあんなにキレイだったのに、今はこんなにくしゃくしゃです。なぜ、それでも欲しいのですか?」
「だって、どんなにくしゃくしゃでも、その一万円札には一万円の価値があるからです。それで一万円の物が買えますから」

その答えを聞いて私は、心配させてしまった事を詫びながら一万円札を返しました。

この時私が、少々乱暴な事をしてまで伝えたかったのは、お札同様、どんな姿になっても私達の勝ちは変わらないという事です。
私達は一生懸命頑張っても失敗するし、いきなり誰かから傷つけられる事もあります。その度にボロボロになったり、くしゃくしゃになったりします。
あなたも長く生きて、色々な経験をすればするほど、古いお札の様になっていきます。でも、そのシワをきちんと伸ばしてみれば、変わらぬあなたが姿を現します。そして、変わる事のない、あなたならではの価値を発揮できるのです。

私達は、ちょっとした事で自分に対する信頼を揺るがせてしまいます。失敗したり傷ついたりして、「もうダメだ」と落ち込んでしまう事もあります。
しかし、それは大きな間違いなのです。あなたがあなたである限り、何があろうとも、あなたの価値は1ミリたりとも失われる事はありません。

鈴木秀子
(シスター・セラピスト)

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