ハードルを下げる

為末さんのとてもいい記事を読みました。

これ、真面目が過ぎて、クソ真面目になりがちな日本人には凄く大事な事だと思う。

幅が必要というか、どっちも必要なんですよね。

「ちゃんとしたもの、確固としたもの」と、「興味を持って貰う、入口となるハードルの低いもの」。

片方しかないと、お互いに成り立たない。

お互いに反対側にあるものが支えてくれている。

レベルの高いもの、志の高い人の行っている競技や音楽、学問があるからこそ、それに憧れ目指す人が生まれるし、

そういった興味を持った人が最初に入りやすい世界があるからこそ、競技人口や関わってくれる人が増えていく。

自分が関わる武道や格闘技は特に、どうしてもハードルが高い分野なので、ここを気軽に関われるものにしていかないと人口が減っていってしまうと思う。

ネットでもコメントが出て話題になりましたが、魔裟斗さんもおっしゃる様に、ブレイキングダウンがメジャーになればなる程、普通の人は避ける世界になってしまうと思うんですよね。

そして、政治や社会問題も全く同じで、気軽にそういった問題についてネットで発言したり、友達と大っぴらに話せる環境を作っていかないと関心を持つ人はどんどん減っていくと思う。

先週末、「ニラリンピック」というイベントに参加していました。正確には、そのイベント自体を韮崎市のスポーツコミッションの方と、韮崎関係者の皆さんと何度もミーティングを重ねながら一緒に作ってきたので私は開催者側でもあります。

参加してくださった皆さんどうもありがとうございました!

韮崎にアメリカヤというリノベーションされた建物があります。その建物をリノベーションしたのが建築士の千葉さんという方で彼は元400メートルハードルの選手でした。私の講演会を聞きにきてくれた彼と出会い、話していく中で、「スポーツはどうして敷居が高いんだろう、もっとスポーツのハードルを下げて誰でも参加することができないだろうか」という話になりました。

スポーツのハードルを思いっきり下げた大会をやってみようと思い立ち、それから何度もミーティングを重ね、一年後に紆余曲折ありながら何とか開催することができました。さながらスポーツのリノベーションのようでした。

大会はボランティアの方も含めて総勢1000人ほどの方に参加してくださいました。遠くは何と北海道からきてくださった方もいて、県外からも多くの方が参加してくれました。この大会で「市民400メートルハードル」という競技を行いました。おそらく世界でも市民と名がついた400メートルハードルの大会は初めてだったのではないかと思います。

100人を超える方に参加していただき合計16組のレースが行われました。三分の一ぐらいは現役か元400メートルハードラー、あとは未経験者の方達だったと思います。ハードルを一番低い高さにしました。

考えてみれば、マラソン人口がたくさん増えたのは市民マラソンができたからです。多くのスポーツは協会に登録し公式の試合に出場します。公式の大会の運営は公平性を保つためにも、厳密に行わなければなりません。でも「厳密であること」にこだわらなければ実は適当でもいいわけです。

市民マラソンのタイムは公式タイムではないものも多くありますが、それを気にしている参加者はそんなに多くないと思います。だったら「市民」と名付けて、非公式に大会をやってしまえばいいのではないか、そんな発想で市民400メートルハードルは誕生しました。もちろん例の千葉くんも走りました。私はもう散々走ってお腹いっぱいなので走ってません。来年もし開催されたら走らないといけなくなりそうですが。

大会の最中に我ながら「ハードルを下げる」はいいコンセプトだなと思いました。日本でこれを言うなら私がぴったりだろうと自負しています。

抽象的に考えてみると、日本は何もかもハードルが高くなりすぎているのではないかと思います。要求する基準が高い。それが規律正しい動きや、時間通り動くスケジュールを支えているのもよくわかります。一方で、上げたハードルを下げられなくなって誰もが苦しそうにしていたりしないでしょうか。

念の為、念の為とどんどん作業が増えていないでしょうか。忖度しすぎて相手が望んでもないことを増やしていないでしょうか。そしてお互いがお互いを慮って、求める基準を上げていき、皆「これ必要なんだろうか」と疑問に思いながらも、誰も言い出せなくて、やめるにやめられなくなっていることはないでしょうか。

大会の準備段階から、私が声高に「この大会の目的はハードルを下げることです」と言い続けたら、じゃあこれも適当で、これも適当でと、いろんなハードルが下がりました。試合中、幅跳びの砂場で子供たちが砂場遊びをし、グラウンドの真ん中で学生たちがサッカーをし、キッチンカーで買った焼きそばを食べながらボランティアをして、アナウンスをしながらMCの方がお弁当を食べる。子供たちがレーンをはみ出して、一つのレーンに三人が走っていました(これはタイム測定で結構困りましたが)。それでも大会は楽しく成立しました。そんなものでいいのではないかと思います。

私の興味は長い間「みんなもっと自由で生きやすく、やりたいことに挑戦をして、人生どの時点からでも新しい自分を始められるにはどうすればいいのか」です。

挑戦を促すより、「ハードルを下げる」ことで、「つい」人が動き出してしまう方が良いのではないかと思っています。

スポーツを通じて「社会の上がりすぎたハードルを下げる」ことを続けていこうと思います。

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