努力や根性を経験した上で醒めなきゃいけない

空手家、k-1ファイターとして活躍した佐竹選手のインタビューより転載です。

面白おかしく話してはるんですけど、凄く感動しました。

やっぱり常人とは違う経験を積んできた人の言葉は深みがありますね。

   【努力や根性を経験した上で醒めなきゃいけない】

今の人は「努力や根性ではなんとかなるなんて、嘘だろう」って冷めている人が多いわけ。
でもそうじゃない。「努力や根性を経験した上で醒めなきゃいけない」っていうのが、持論なんですよ。

なんでも能書きだけ言っても駄目。実践してみて初めて体で知って、そこから考察に入るというのが正しい道じゃないかなと。

   【何事かを成したければ、人から笑われるくらいでないとダメ】

『空手バカ一代』にどっぷりつかりました。まず、家の裏の公園の木を蹴り始めた。それも毎日! でも、公園の木を、十四歳の男の子が毎日「エイ、ヤ―ッ」って蹴っているんですよ。普通どう思います?

──そりゃあね……
佐竹 でしょ。当然「佐竹さんのところの長男はどうかしてるで」とか「やめた方がええんとちゃうか」とか、笑われてたと思う。それでも僕はまったく気にならずに木を蹴り続けた。だから「ドコドコ中の番長は強い」とか「誰それに喧嘩で勝った」とかいろんな話が入ってきても、全然気にならんかったね。別世界の話に感じてね。

──完全に外部遮断ですね。
佐竹 そんな自己流の稽古からちょうど一年くらいたったある日、一人の男の人が話しかけて来た。「君、ずっとやっているねえ」って言うんですよ。「毎日ここで木を蹴っているねえ」って。

──ほお。
佐竹 その人は「極真会」のマークが付いたジャージを着ていた。つまり極真空手の人だったんです。僕も「おお、極真の人やあ」って思うじゃない。そしたら「構えてごらん」って言うから、本で読んだ自己流の構えをしたら、「腰が高いんだよ!」っていきなり蹴られた(笑)。

──うわあ!
佐竹 もうね、痛みと破壊力が半端なかった。でも「これが極真なんだ」ってある意味感動してね。次に「突きをやってごらん」と言われて、本の分解写真で見た通りにやったら「違う、こうだ!」と。その一突きを見て「本って意味なかった」って(笑)。

──じゃあ通信講座もだめですね(笑)。
佐竹 当たり前の話だけど、やっぱり人から直接習うべき(笑)。そこから一時間くらい稽古をつけてもらってね。その後公園のベンチに座っていろいろ話をしたんだけど、そのときに「君は一体何になりたいんだ?」って訊いてきて。

──ほう。
佐竹 それで「山籠りをする」とか「牛を殺す」とかアホなことを言うて(笑)。そしたらその人、ニヤッと笑って「他には?」って言うんで、「じゃあ空手で日本一ですかねえ」って言ったら「あ、それならなれるよ」とあっさり答えるんですよ。「なんでなれるか教えてやろうか」と言われたから「教えて下さい!」と。

──気になりますよねえ。
佐竹 「君はね、人に笑われることをしているからだ」と言うんです。最初はどういう意味やろうと思いましてね。そしたらその人は「君、なんで人は笑うか知っているか?」とさらに訊いてくるんです。

──禅問答みたいですね。
佐竹 「なんでしょう」って答えたら「それはね。誰もやらないことを笑うんだよ」と。「誰もやらないってことは、先頭に立ってレールを敷いていることなんだ。だから君はその資格があるんだよ。人からバカにされた笑いを、いずれ拍手に変えてやりな」って。

──感動するなあ!
佐竹 僕もハッと目が覚めたような気がしてね。確かにバロメーターとして考えると、人からバカにされるくらいじゃないと、偉業って達成できないんですよね。エジソンしかりライト兄弟しかり。


   【人間にはかかなければならない恥がある】

佐竹 そこから、「よし、どんどん、人に笑われてやろう」と思って、学校の休憩時間はずっとトレーニング!
一時間目終わったら腕立て。二時間目終わったら腹筋。三時間目終わったら逆立ち。で、四時間目終わったら弁当食べて昼休憩でしょ。その時間、クラスのみんなは庭球野球やったりサッカーやってたんですけど、僕はひたすら懸垂やったり、蹴りの練習ですよ。それは高校に進学してもずーっと続けた。

──それは凄い。
佐竹 これは大学に進学してからの話になるけど、別の高校から来た奴が「佐竹って、あの佐竹か」って言うんです。「話は聞いてる」って(笑)。

──ガハハハ! でも本当にそれを実践するのは凄いですね。
佐竹 だからね、恥にも二つあると思っていて、してはいけない恥は「羞恥心」。していい恥は「廉恥」。かかないといけない恥のことなんです。それを破るのが「破廉恥」でしょう。だから破廉恥は駄目なんですよ。

   【人生の中にはにげてはならない大舞台がある】

全日本キックボクシング連盟から「(アメリカのキックボクサーの)ドン中矢ニールセンと戦いませんか」って偶然オファーがあった。

──ニールセンは前田日明とも異種格闘技戦で戦ってますからね!
佐竹 「おー、俺がやりたかったのはこれやあ」って。ルールはキックボクシングルール。空手ルールじゃないんだからね。契約体重だったから体重も落として、前歯も四本抜いてね。条件はみんな向こうの言い分を飲んだわけです。こっちとしては千載一遇のチャンスなわけだから、条件を四の五の言うてられへん。「これで負けたら前田日明どころじゃない」「これで負けたら先はない」っていう本当に必死の想いでしたね。

── 一世一代の大勝負でしたね、あれは。
佐竹 これを読んでいるビジネスマンの人たちにも言いたいのはね、人間って人生の中で必ず大勝負をしなきゃいけないときがある。それも、一回あるかないかですよ。そこで腰を引いてしまって後で言い訳するか、それとも真正面からぶつかって、新しい扉を開くかっていったら、それは後者でありたいでしょう。

大勝負の機会ってそうそうないんですよ、ぶっちゃけ。天はそんなにチャンスをくれないから。それが僕にとってのニールセン戦でした。

   【おもろいヤツやと思われろ!自己プロデュース能力】

── 一気に格闘技界の中心人物に躍り出た感じでしたね。
佐竹 そこで発揮せなあかんのが「自己プロデュース能力」ですよ。「こいつ、おもろい奴やなあ」って思われておこうというのが最初。それでテレビに出るたびに「こんにちは、あき竹城です」とか言うて(笑)。あげくに「なつ竹城です」とか「ふゆ竹城です」とか言ってたら、さすがに館長に怒られた(笑)。

──ガハハハ!
佐竹 「おちゃらけんな」って(笑)。でもね、それはただ馬鹿みたいにおちゃらけてるわけじゃないと。意味があるんだって館長に説明して。「強い人が強そうに振る舞うのは当たり前でしょう。でも、強い人が、実はアニメ好き、お笑い好き、AV好きと、ファンとの共通点を作っていったら、魅力が倍増するでしょう」と。そしたら、東スポで「AVヌケる10本」の連載が始まった(笑)。

──そんな連載まで!
佐竹 でもそうやって、ファンとの距離を詰めていくって大切だと思ったんですよ。そこは「笑われてもやっとこう」という、中学生のときに空手の先生から教わった初志があったし。

   【最強とは?】

最強って一般的に「強い弱い」とか「誰それに勝った」とか「チャンピオンになった」とかっていう物差しで見るでしょう。僕はそうじゃないと思うんです。だって、それって一過性のものだから。その瞬間だけ最強でも、数年後はそうじゃなかったら、それは最強とはいわないでしょう、というのが僕の考え。

最強っていうくらいだから、人生という長いスパンで見るべきだと思うんですね。そこで思うのは「生きてる限り、どんなところに行っても、いつでも、ワクワクできるものを持つ」これが僕の最強の定義なんです。

 「最強とは、過去の栄光にこだわらず、いつも、今をよくしていく」……じゃないかなあと。ワクワクって最強ですよ。実際に「こんなことをやってみたいなあ」「こういうことが実現したらいいなあ」それが、「すごいチャンスが舞い込んできそうだ」「明日商談がまとまりそうだ」それってすべてワクワクでしょう。


心のネジを巻くのは、ワクワクしかない。

   【知らない世界を知ると謙虚になれる】

──なるほど。ちなみに、K-1から離れた後、PRIDEに参戦しましたよね。それもある意味のワクワクだったんですか?
佐竹 もちろんそれもあったけど、それより大きい理由があった。というのも、僕は自分の道場をすでに持っていたしね。それで引退したあと、生徒さん集めて格闘技を教えることになるだろうという想像はするでしょう。でも、そのときに、「先生、なんでPRIDE出なかったんですか」「なんで寝技できないんですか」とは言われたくないなって。

──ははあ!
佐竹 だってあの時期のPRIDEて、本当の世界最高峰だったでしょ。コールマンみたいなアマチュアレスリングのトップから、ノゲイラみたいな柔術家。ヒョードル、ミルコ…もうトップ中のトップが集まっていた。もちろんK-1も凄かったですよ。立ち技格闘技の中では世界一だったと思う。そしたらその次に総合格闘技の世界最高があるんなら、無視できないですよ。さらにそこからオファーが来たんなら、これはもう断るわけないですよねえ。

──かっこいい!
佐竹 だから、あの時期はいろんな選手に負けているでしょう。でも、これは絶対「後々必要になってくる」「経験が活きてくる」という想いがあった。事実、それで謙虚になれたしね。

──佐竹さん自身がですか?
佐竹 いや、もっと言うと、あのまま空手ルールでずっと試合をしていたら、謙虚さなんかなかっただろうね。顔面アリのK-1に足を踏み入れたから、そこで学べたし謙虚になれた。それで寝技アリの総合格闘技もやったから、やっぱりまた謙虚なれた。だって、PRIDEに出ていた頃、高田道場に出稽古行っててね。桜庭とも何度も練習したけど、本当に強いのよ。

──やっぱりそうでしょうね。
佐竹 全盛期の彼は本当に強い。タックルにスッと入ってすぐ転がされるんだけど、極めがとにかく強いわ。ああいうのを経験しているのと、していないのとでは全然違ってくるでしょう。だから知らない世界を知ると謙虚になれるのよ。そこはみんな知っておいてほしい。

   【出会った相手に、敬意を払い、決してうぬぼれないこと】


──では、今まで戦った選手の中で一番強かったのは誰ですか?
佐竹 それはねえ……もちろん、アーツも、ベルナルドも、みんな強かった。コールマンも強かった。でもねえ……10代のときに出た空手の大会の一回戦で戦った子も強かった。いや、本気で向かってくるわけだから、本当に彼らは強かったんだよ。だから、そういう意味も含めて、戦った選手はみんな強かったとしか言えないし、言ってはいけないと思う。

──素晴らしい話です。
佐竹 実際そうなんですよね。その時々に。それも、最強であるためのひとつの条件じゃないかな。それにね、戦っているのは、今だけではないんでね。

──どういうことでしょう?
佐竹 40代、50代……しんどい年齢なんですよ。同年代のビジネスマンの方もそう思っているはず。でも、今はまだ立ち止まらずに、後の世代に背中を見せながら動き続ける時期なんですね。そして、それこそが本当の「運動」でもあるわけです。「運を動かす」で「運動」。だから運を掴むには、まだ立ち止まれない。そう肝に銘じて踏ん張ります。僕の戦いはまだまだこれからですよ!

以上抜粋

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